年齢計算法

明治になり新暦導入と共に法律上の年齢の計算法として満年齢が導入されますが、明治35年に現行法が導入されるまでの間は少々特殊な満年齢が適用されています。

明治6年 年齢計算方

(明治6年太政官布告第36号) 現代語訳→年齡計算方ヲ定ム

  1. 自今年齡ヲ計算候儀幾年幾月ト可相數事
  2. 但舊曆中ノ儀ハ一干支ヲ以テ一年トシ其生年ノ月數ト通算シ十二ヶ月ヲ以テ一年ト可致事

この法令により満年齢が導入されましたが、現在の満年齢と違い「○年○月(○歳○ヶ月)」という年齢の数え方になります。
年齢計算は初日算入のため生まれた月が満1月(1ヶ月)となります。
生まれた日にちは関係なく、誕生月の前の月が来ると満12ヶ月となるため1歳加算されます。
二項目は新暦への移行前(明治5年以前)に生まれた人への年齢計算補足になります。(例えば天保14年生まれの年齢であれば癸卯から干支を年数として数え、あとは誕生月を合わせます。天保14年6月生まれであれば明治6年5月に満30歳になります) Wikipediaを見ると明治6~35年の間「旧暦における年齢計算は従前の通りに数え年を使うこととしていた」と書かれていますが、当時の年齢早見表等を見ると数え年とは違うのがわかります。この年齢早見表は法令の二項目を言葉通り行っています。

例 明治6年5月x日生まれの年齢計算法(~明治35年)
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
明治6年 0歳1ヶ月 0歳2ヶ月 0歳3ヶ月 0歳4ヶ月 0歳5ヶ月 0歳6ヶ月 0歳7ヶ月 0歳8ヶ月
明治7年 0歳9ヶ月 0歳10ヶ月 0歳11ヶ月 1歳0ヶ月 1歳1ヶ月 1歳2ヶ月 1歳3ヶ月 1歳4ヶ月 1歳5ヶ月 1歳6ヶ月 1歳7ヶ月 1歳8ヶ月
明治8年 1歳9ヶ月 1歳10ヶ月 1歳11ヶ月 2歳0ヶ月 2歳1ヶ月 2歳2ヶ月 2歳3ヶ月 2歳4ヶ月 2歳5ヶ月 2歳6ヶ月 2歳7ヶ月 2歳8ヶ月
明治9年 2歳9ヶ月 2歳10ヶ月 2歳11ヶ月 3歳0ヶ月 3歳1ヶ月 3歳2ヶ月 3歳3ヶ月 3歳4ヶ月 3歳5ヶ月 3歳6ヶ月 3歳7ヶ月 3歳8ヶ月
明治10年 3歳9ヶ月 3歳10ヶ月 3歳11ヶ月 4歳0ヶ月 4歳1ヶ月 4歳2ヶ月 4歳3ヶ月 4歳4ヶ月 4歳5ヶ月 4歳6ヶ月 4歳7ヶ月 4歳8ヶ月
明治11年 4歳9ヶ月 4歳10ヶ月 4歳11ヶ月 5歳0ヶ月 5歳1ヶ月 5歳2ヶ月 5歳3ヶ月 5歳4ヶ月 5歳5ヶ月 5歳6ヶ月 5歳7ヶ月 5歳8ヶ月
...
明治26年 19歳9ヶ月 19歳10ヶ月 19歳11ヶ月 20歳0ヶ月 20歳1ヶ月 20歳2ヶ月 20歳3ヶ月 20歳4ヶ月 20歳5ヶ月 20歳6ヶ月 20歳7ヶ月 20歳8ヶ月

徴兵はその年の12月の時点で満20歳の者が徴兵検査を受けることになるため、明治6年5月生まれの人は明治26年の徴兵(検査)の対象になります。同様に数えると明治6年1月生まれの人は明治25年12月に満20歳になるため、同じ明治6年生まれでも明治25年の徴兵(検査)の対象となります。

明治35年 年齢計算ニ関スル法律

(明治35年法律第50号 明治35年12月2日公布、同年12月22日施行)

  1. 年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス
  2. 民法第百四十三条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス
  3. 明治六年第三十六号布告ハ之ヲ廃止ス

3項のみの短い条文であり、現在も続いている現行法になります。年齢は誕生日前日の24時0分0秒に加算されるため、現在でも学校等は4/1生まれの人は前年度の入学になっていたりします。また閏年の2月29日生まれの人も毎年年齢が加算されます。

この法律の施行により年齢計算法が変わった為、日露戦争時頃は徴兵対象の生年月日に少しズレが生じます。

  • 明治35年12月入営:明治15年2/1~明治16年1/31生
  • 明治36年12月入営:明治16年2/1~明治16年12/1生
  • 明治37年12月入営:明治16年12/2~明治17年12/1生

(以降は明治37年入営と同様)

  • 明治35年陸軍省告示第12号 明治三十六年以後徵兵令第二十五條前段ニ依リ屆出ツヘキ者及其徵集セラルヘキ者ノ出生年月日

数え年

法令上は満年齢が使用されましたが、世間一般で年齢を表すには依然として数え年が使用されました。これは太平洋戦争終了後「年齢のとなえ方に関する法律」が出来て以降廃れていきます。数え年は

  • 生まれた時点で1歳
  • 以降1月1日を迎える度に+1歳 (誕生日に関わらず皆1月1日に年を取る)

このため「誕生日を祝う」という習慣も一般的には下記の法律の施行後に普及していきます。

年齢のとなえ方に関する法律

(昭和24年法律第96号 昭和24年5月24日公布、昭和25年1月1日施行)

  1. この法律施行の日以後、国民は、年齢を数え年によつて言い表わす従来のならわしを改めて、年齢計算に関する法律(明治三十五年法律第五十号)の規定により算定した年数(一年に達しないときは、月数)によつてこれを言い表わすのを常とするように心がけなければならない。
  2. この法律施行の日以後、国又は地方公共団体の機関が年齢を言い表わす場合においては、当該機関は、前項に規定する年齢又は月数によつてこれを言い表わさなければならない。但し、特にやむを得ない事由により数え年によつて年齢を言い表わす場合において、特にその旨を明示しなければならない。

年齢計算そのものに関する法律ではなく、数え年を使わないよう心がけるように、という法律になります。