基本的に歩兵聯隊についての内容になります

士官(少尉)になるには

現役士官へのなり方:平時現役士官になれるのは陸軍士官学校を卒業した者のみ
所謂兵卒や下士上がりの「叩き上げ将校」の現役での士官への昇進は戦時下のみで、平時の場合は予備役経由でしかなれなかった(そして予備役経由はそのまま予備役へ編入)

明治29年12月2日~明治36年11月30日

[下記に於いて、明治31年9月8日~は監軍→教育総監、明治32年11月14日~は一等軍曹→軍曹、二等軍曹→伍長]

  • 士官候補生として採用すべき者
    1. 中央幼年学校生徒にして卒業試験に及第した者
    2. 官立、府県立尋常中学校もしくは文部大臣の指定したる尋常中学校を卒業し、該校長の保証並びに入隊すべき隊長の承認を得た者
    3. 第2項の尋常中学校卒業者と同等の学力を有し、入隊すべき隊長の承認を得、召募試験に及第したる者
    4. 下士兵卒(一年志願兵にあらざる者)及び陸軍所生徒には前項第2第3を適用せず
    5. 一年志願兵より士官候補生に採用する者は命ずる日に直ちに退営させる[その服役を免す/明治31年9月~]
      • 上項2に当てはまる者は学科試験を行わず、必要があれば若干の科目を選び学力を検定する
  • 士官候補生として採用できない者
    1. 妻ある者
    2. 本人並びに父もしくは戸主が家資分散または破産の宣告を受け未だ復権を得ざる者および身代限りの処分を受け弁償の義務を終えざる者
    3. 禁固の刑に処せられたる者および賭博犯の処分を受けたる者
    4. 素行修まらざる者
  • 士官候補生の原隊への配賦
    • 監軍は士官候補生に採用すべき者を裁定し、士官候補生を命じて各兵隊(入隊すべき隊長の承認を得た者は其の隊)に配賦する
    • 士官学校入学の概ね1年(中央幼年学校出身の者は概ね6ヶ月)原隊に所属し下士兵卒の勤務(雑役を除く)及び軍事学を習得する
    • 中央幼年学校出身の士官候補生を各兵隊に配賦するには以下の四項目に顧慮する
      • 本人の希望
      • 軍隊の必要
      • 学術優等者の平均
      • 砲兵隊、工兵隊、鉄道隊には数学優等者
    • 士官候補生入隊後は中隊に編入し、中隊長をして訓育と諸勤務の訓練を行う
    • 士官候補生の軍事学の教授は隊長、部下大尉もしくは中尉
    • 中央幼年学校出身の者は入隊の後直ちに上等兵の階級を与え、二ヶ月の後は二等軍曹の階級に、六ヶ月の後は一等軍曹の階級に進める
    • その他の者は入隊の後直ちに一等卒の階級を与え、六ヶ月の後は上等兵の階級に、八ヶ月の後は二等軍曹の階級に、一箇年の後は一等軍曹の階級に進める
    • (=共に陸士入学に伴い一等軍曹[軍曹]へ進級する)
  • 士官学校入学/卒業
    • →別ページ参照
  • 士官学校卒業後:見習士官
    • 士官学校の修学を終え卒業試験に及第し原隊に帰隊したときには、隊長はこれに見習士官を命じ、中隊に於いて六ヶ月以上士官の勤務を習得させる
    • 見習士官を命ぜられた士官候補生の身分は曹長の階級とする
  • 明治22年5月7日 勅令第61号 陸軍武官進級令
  • 明治29年6月4日 勅令第238号 陸軍服役条例
  • 明治29年12月2日 勅令第379号 陸軍補充条例
  • 明治29年12月19日 陸軍省令第26号 陸軍召募規則

日露戦役の初級士官

日露戦争開戦時の現役少尉は陸士13~15期生(15期生は任官日によっては見習士官)、また17期生までが参戦している
陸幼については滞学などがなくストレートで陸士入学した場合を記載しています
日露開戦時は「日清役で特務曹長より少尉に任用された古参将校」がいて、他に「一年志願兵を経て予備役に入った者」「予備役・後備役准士官下士にして士官に進級したる者」も参戦していますが(特に小隊長に一年志願兵)ここでは平時の士官候補生について記載します

13期生

日露戦争動員時の各聯隊の聯隊旗手は動員の遅かった第七師団以外は基本的に13期生の様子

陸幼組 中学組
明治30年9月 陸軍中央幼年学校入学
明治33年5月 陸軍中央幼年学校卒業 明治32年春 召募試験
原隊附 明治33年5月31日~ 原隊附 明治32年12月1日~
明治33年12月1日 陸軍士官学校入学
明治34年11月30日 陸軍士官学校卒業
原隊附
明治35年6月23日 少尉任官
  • 陸幼組
    • 召募「明治12年10月より同15年10月までに出生の者」(150人)
    • 明治30年9月1日 陸軍中央幼年学校入学
    • 明治33年5月31日 陸軍中央幼年学校卒業(130名)
    • 原隊附半年
  • 中学組
    • 召募「明治10年1月より同15年1月までに出生の者」(550人)
    • 明治32年12月1日 各隊に配賦(621名)
    • 原隊附1年
  • 士官学校
    • 明治33年12月1日 陸軍士官学校入学
    • 明治34年11月30日 陸軍士官学校卒業

14期生

陸幼組 中学組
明治31年9月 陸軍中央幼年学校入学
明治34年5月 陸軍中央幼年学校卒業 明治33年春 召募試験
原隊附 明治34年5月31日~ 原隊附 明治33年12月1日~
明治34年12月1日 陸軍士官学校入学
明治35年11月30日 陸軍士官学校卒業
原隊附
明治36年6月26日 少尉任官

14期生まで幼年学校は修学期間が3年

  • 陸幼組
    • 「明治13年10月より同16年10月までに出生の者」(召募200人)
    • 明治31年9月1日 陸軍中央幼年学校入学
    • 明治34年5月 陸軍中央幼年学校卒業(183名+滞学生徒3名)
    • 原隊附半年
  • 中学組
    • 明治11年1月より16年1月までに出生の者(召募560人)
    • 明治33年12月1日 各隊に配賦(554名)
    • 原隊附1年
  • 士官学校
    • 明治34年12月1日 陸軍士官学校入学
    • 明治35年11月30日 陸軍士官学校卒業

15期生

陸幼組 中学組
明治30年9月 陸軍地方幼年学校入学
明治33年9月 陸軍中央幼年学校入学
明治35年5月 陸軍中央幼年学校卒業 明治34年春 召募試験
原隊附 明治35年5月31日~ 原隊附 明治34年12月1日~
明治35年12月1日 陸軍士官学校入学
明治36年11月30日 陸軍士官学校卒業
原隊附
明治37年2月11日 or 3月18日 少尉任官

ここから陸幼組は地方幼年学校1期生

  • 陸幼組
    • 「明治14年10月より17年10月までに出生の者」(召募毎校50人)
    • 明治30年9月1日 陸軍地方幼年学校入学
    • 明治33年9月1日 陸軍中央幼年学校入学
    • 明治35年5月31日 陸軍中央幼年学校卒業(245名)
    • 原隊附半年
  • 中学組
    • 明治12年1月より17年1月までに出生の者(召募460人)
    • 明治34年12月1日 各隊に配賦(504名)
    • 原隊附1年
  • 士官学校
    • 明治35年12月1日 陸軍士官学校入学
    • 明治36年11月30日 陸軍士官学校卒業

  • 明治29年12月19日 陸軍省令第26号 陸軍召募規則

士官の進級

進級には
 停年補除(実役停年の期限を経た順序により進級させる)と
 抜擢補除(実役停年の最下期限を超えた者を上官(将校)が抜擢して進級させる)
がある
実役停年は戦時に於いては半減

明治22年~

  • 実役停年
    • 少尉→中尉:2年 抜擢1/3、停年2/3
    • 中尉→大尉:2年 抜擢と停年が相半
    • 大尉→少佐:4年
  • 明治22年5月7日 勅令第61号 陸軍武官進級令